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東京地方裁判所 平成4年(刑わ)1106号・平4年(刑わ)1276号・平4年(特わ)556号・平4年(特わ)1118号 判決

右七名に対する各詐欺、丸西輝男に対する法人税法違反、古屋親彦に対する商法違反、所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官今村隆、渡邉清、弁護人山口治夫(島田清志関係)、高橋恒雄(丸西輝男、青柳正明、蓮見四郎関係)、山田宰(丸西輝男関係)、西山彬、谷川徹三、土谷明、古井明男(古屋親彦関係)、村上昭夫(青柳正明、蓮見四郎関係)、小林芳郎、佐脇浩(大山正芳関係)、前田知道(半澤隆関係)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

一  被告人島田清志を懲役三年に処する。

未決勾留日数中四〇〇日を右刑に算入する。

この裁判の確定した日から五年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用(国選弁護人に関する分)は右被告人の負担とする。

二  被告人丸西輝男を懲役七年及び罰金八〇〇〇万円に処する。

未決勾留日数中四〇〇日を右懲役刑に算入する。

右罰金を完納することができないときは、金四〇万円を一日に換算した期間右被告人を労役場に留置する。

三  被告人古屋親彦を懲役五年六月及び罰金一五〇〇万円に処する。

未決勾留日数中四七〇日を右懲役刑に算入する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間右被告人を労役場に留置する。

四  被告人青柳正明を懲役三年六月に処する。

未決勾留日数中四〇〇日を右刑に算入する。

五  被告人蓮見四郎を懲役三年に処する。

未決勾留日数中四〇〇日を右刑に算入する。

六  被告人大山正芳を懲役三年に処する。

未決勾留日数中四〇〇日を右刑に算入する。

この裁判の確定した日から五年間右刑の執行を猶予する。

七  被告人半澤隆を懲役二年六月に処する。

未決勾留日数中一三〇日を右刑に算入する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一(被告人七名に対する各詐欺被告事件)

被告人島田清志は、東京都中央区京橋二丁目一一番八号(平成二年六月一〇日以前は同区銀座一丁目六番八号)に本店を置き、ゴルフ場の経営及びゴルフ会員権の売買仲介等を目的とするケン・インターナショナル株式会社(以下「ケン・インター」という)の専務取締役として、同社の代表取締役(同社の業務全般の統括者)水野健を補佐し、同社経理部門を統括していたもの、被告人丸西輝男は、東京都新宿区歌舞伎町二丁目一六番九号に本店を置き、ゴルフ会員権販売等を目的とする株式会社三輝(以下「三輝」という)の代表取締役として、同社の業務全般を統括していたもの、被告人古屋親彦は、三輝の取締役副社長として、右丸西を補佐し、同社の業務全般を統括していたもの、被告人青柳正明は、三輝の専務取締役として、右丸西を補佐し、同社の営業部門を統括していたもの、被告人蓮見四郎は、三輝の常務取締役として、右丸西を補佐し、同社傘下の販売代理店の管理を統括していたもの、被告人大山正芳は、三輝の取締役として、右丸西を補佐し、同社の経理部門を統括していたもの、被告人半澤隆は、三輝の営業部長として、同社のゴルフ会員権販売業務を掌理していたものであるが、右被告人七名は、ケン・インターにおいて全株式を保有する株式会社常陸観光開発(以下「常陸観光開発」という)が茨城県高萩市に建設中のゴルフ場「茨城カントリークラブ」のゴルフ会員権販売代金(入会金及び会員資格保証金)名下に多数の顧客から金員を騙取しようと企て、水野健のほか、三輝のゴルフ会員権販売員である別紙1及び2の各犯罪事実一覧表の「欺罔者」欄記載の者らと共謀の上、同表記載のとおり、平成元年一〇月中旬ころから同年一一月三〇日ころまでの間、茨城県牛久市奥原町三二一七番地所在の坂本半悟方等の場所において、坂本半悟ほか三一二名に対し、真実は、同クラブのゴルフ会員権を二万人以上の多数の顧客に販売する意図であるため、右ゴルフ場施設が完成しても、会員がその権利を行使して同施設を利用することはほとんど不可能であり、かつ、会員権価格の値上がりも期待できないのに、これを秘し、右「欺罔者」欄記載の者らにおいて、「会員権は、正会員一八三〇名、平日会員一〇〇〇名、合計二八三〇名の限定販売なので、会員はいつでも予約が取れ、好きなときにゆっくりプレーが楽しめます」「完成記念募集は一〇〇〇万円、オープン記念募集は一五〇〇万円で、会員権も値上がりするので利殖にもなります」などとうそを言い、右坂本らをしてその旨誤信させ、よって、同年一一月二日ころから同年一二月八日ころまでの間、前同所等の場所において、同人ほか三一二名から、右「茨城カントリークラブ」会員権販売代金名下に現金合計七億三〇四二万円、約束手形一二〇通(額面金額合計八五九万六〇〇〇円)及び小切手五通(額面金額合計五〇九万五〇〇〇円)の交付を受けてこれを騙取したものである。

第二(被告人丸西輝男に対する法人税法違反被告事件)

被告人丸西輝男は、前記のとおり、三輝の代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが、同社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の支払手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、平成元年六月一日から平成二年五月三一日までの事業年度における同社の実際所得金額が一六億四四五一万二八五九円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成二年七月三一日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所轄新宿税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六億八三九六万七五四九円で、これに対する法人税額が二億五二七〇万六五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同社の右事業年度における正規の法人税額六億三六九一万七八〇〇円と右申告税額との差額三億八四二一万一三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

第三(被告人古屋親彦に対する商法違反及び所得税法違反被告事件)

被告人古屋親彦は、

一  三輝の専務取締役ないし取締役副社長として、同社における営業関係等の業務全般を統括し、同社のため誠実にその業務を遂行すべき任務を有していたものであるが、右任務に背き、自己の利益を図る目的をもって、同社の広告宣伝の発注先業者である株式会社ブレーンアンドパートナーズアドバタイジングエージェンシー(代表取締役矢部晃久。以下「ブレーン社」という)に対し、正規の広告宣伝代金額に不当に上乗せした高額の代金を三輝から支払わせた上、右矢部から正規の代金額との差額を還元させて自己の用途に費消しようと企て、別紙5の犯罪事実一覧表記載のとおり、昭和六三年一二月二七日ころから平成二年七月二五日ころまでの間、前後一九回にわたり、東京都新宿区歌舞伎町二丁目一六番九号TKビル内の三輝事務所において、同社従業員市川滿幸らを介してブレーン社従業員小林晴彦らに対して、三輝がブレーン社に支払うべき正規の代金額に合計二億〇一九六万円を上乗せした額面合計一一億八六六九万〇〇七六円の三輝振出の小切手合計二〇通を交付し、もって三輝に対し合計二億〇一九六万円の財産上の損害を加え、

二  三輝の取締役副社長等として勤務する傍ら前記方法によりブレーン社から収入を得ていたのに、自己の所得税を免れようと企て、右収入を仮名普通預金口座に入金するなどの方法により所得を秘匿した上、

1  平成元年分の実際総所得金額が一億四三〇六万七一七五円(別紙6の所得金額総括表及び修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成二年三月一三日、所轄の前記新宿税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が四三二三万五三九一円で、これに対する所得税額が一八八万三四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、平成元年分の正規の所得税額五一七八万八四〇〇円と右申告税額との差額四九九〇万五〇〇〇円(別紙8のほ脱税額計算書参照)を免れ、

2  平成二年分の実際総所得金額が一億〇七〇三万五七二六円(別紙7の所得金額総括表及び修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年三月一五日、所轄の前記新宿税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が五〇三〇万九六四〇円で、これに対する所得税額が三九九万〇五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、平成二年分の正規の所得税額三二三二万七〇〇〇円と右申告税額との差額二八三三万六五〇〇円(別紙8のほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

注……以下本項では表示の便宜上次のとおりとする。

(1)  括弧内の甲、乙の各番号は、検察官提出の証拠等関係カード記載の請求番号に対応する証拠を示す。

(2)  括弧内番号欄に丸西とあるのは併合前における被告人丸西輝男に対する東京地方裁判所平成四年特(わ)第一一一八号法人税法違反被告事件の、同じく古屋とあるのは併合前における被告人古屋親彦に対する同平成四年特(わ)第五五六号商法違反、所得税法違反被告事件の各証拠等関係カード記載の検察官請求番号を示す。

(3)  丸西公判調書とあるのは併合前の右丸西関係事件の、古屋公判調書とあるのは併合前の右古屋関係事件の公判調書を示す。

(4)  判示第一の別紙1及び2の各犯罪事実一覧表を「別表1」「別表2」と略記し、その番号欄の数字(算用数字)を漢数字で表記する。

判示第一の各事実について

一  公判調書中の被告人らの各供述部分(公判回数と被告人名は次のとおり)

第一回……被告人七名

第三回……丸西輝男

第四回……古屋親彦、青柳正明、蓮見四郎

第五回……大山正芳、半澤隆、島田清志

一  被告人らの検察官に対する各供述調書(被告人名と証拠番号は次のとおり)

島田清志(一三通=乙一三~二五)、丸西輝男(一二通=乙二六~三七)、古屋親彦(一三通=乙三八~五〇)、青柳正明(一一通=乙五一~六一)、蓮見四郎(九通=乙六二~七〇)、大山正芳(九通=乙七一~七九)、半澤隆(一四通=乙八〇~九三)

一  公判分離前の相被告人水野健の検察官に対する供述調書一二通(乙一~一二)

一  次の者の検察官に対する各供述調書

楠原貞雄(三通=甲四二、四三、五八九)、金光宏(二通=甲四八、四九)、田中幹輝(三通=甲五八、五九、五九一)、岡崎芳郎(二通=甲六七、六八)、山本正巳(三通=甲七六、七七、六一二)、繁山幸洋(三通=甲八〇、八一、六二四)、大和田貞男(三通=甲八六、八七、六五七)、井上栄(三通=甲九一、九二、六七〇)、川島智治(三通=甲九八、九九、六七八)、今枝敬之(三通=甲一〇八、一〇九、六九九)、館野幸一(三通=甲一一一、一一二、六八七)、片岡清(三通=甲一一六、一一七、七〇四)、菅沼清(三通=甲一二二、一二三、七二三)、澤田初男(三通=甲一三三、一三四、四三九)、滝口和彦(二通=甲一四〇、一四一)、秦徳太郎(二通=甲一五七、一五八)、池田康夫(二通=甲一六八、四五六)、黒川勉(五通=甲一七三~一七六、四四二)、和野卓也(三通=甲一八六、一八七、四六五)、内田隆(三通=甲一九一、一九二、五〇八)、平良正秀(三通=甲一九五、一九六、五一〇)、込山宗一郎(二通=甲二〇二、二〇三)、赤羽謙次(三通=甲二〇六、二〇七、五三四)、岩元研一郎(三通=甲二〇九、二一〇、五六八)、今井功(三通=甲二一四、二一五、四七三)、山本智義(三通=甲二一七、二一八、四七五)、早川輝雄(二通=甲二二九、二三〇)、桑原義征(二通=甲二三四、二三五)、西口芳朗(二通=甲二四七、二四八)、樋口康(二通=甲二六〇、二六一)、宮崎誠司(二通=甲二七四、二七五)、大森公武(二通=甲二八九、二九〇)、内藤修(二通=甲二九三、二九四)、門間誠也(二通=甲三一三、三一四)、百瀬博志(二通=甲三二一、三二二)、上野山由治(二通=甲三三五、三三六)、石島龍一(二通=甲三三八、三三九)、貝阿彌晃(二通=甲三四九、三五〇)、清水雪子(二通=甲三六一、三六二)、大野均(二通=甲三七一、三七二)、森下孝之(二通=甲三八三、三八四)、山田光男(二通=甲三九六、三九七)、船附昭裕(二通=甲四〇一、四〇二)、鈴木寿美(二通=甲四一四、四一五)、武重雅美(二通=甲四二五、四二六)、杉浦勇次(二通=甲四八三、四八四)、山本克治(二通=甲四九三、四九四)、福原考幸(二通=甲五一八、五一九)、飯塚浩司(二通=甲五三七、五三八)、熊木康昭(二通=甲五五七、五五八)、齊藤秀男(二通=甲五七六、五七七)、宮崎忍(二通=甲六〇一、六〇二)、齊藤勇喜(二通=甲六三五、六三六)、関口龍哉(二通=甲六六〇、六六一)、野口勝康(二通=甲七一四、七一五)、山田武志(甲七三四)、佐久間和雄(甲七三五)、潮田政夫(甲七三六)、吉田哲郎(甲七三七)、片岡洋一(甲七三八)、荒川周征(甲七三九)、高梨孝江(甲七四〇)、富永義政(甲七四一)、堀井伸治(甲七四二)、渡邊公夫(四通=甲七四三~七四六)、松尾一成(三通=甲七四七~七四九)、市川満幸(甲七五〇)、石井靖夫(二通=甲七五一、七五二)、松本哲雄(甲七五三)、秋元英之(甲七五四)、友利長榮(甲七五五)、奈良克彦(甲七五六)、須藤正男(甲七五七)、大山啓一郎(五通=甲七七二~七七六)、山下俊治(三通=甲七九一~七九三)、大谷範男(甲八一七)、菊地守(=須賀守)(四通=甲八四二~八四五)、高橋博安(甲八四六)

一  次の者の司法警察員に対する各供述調書

楠原貞雄(九通=甲三八~四一、五八四~五八八)、金光宏(四通=甲四四~四七)、田中幹輝(四通=甲五五~五七、五九〇)、岡崎芳郎(四通=甲六三~六六)、山本正巳(二通=甲七五、六一一)、繁山幸洋(二通=甲七九、六二三)、大和田貞男(三通=甲八四、八五、六五六)、井上栄(四通=甲八八~九〇、六六九)、川島智治(二通=甲九七、六七七)、今枝敬之(九通=甲一〇五~一〇七、六九三~六九八)、館野幸一(三通=甲一一〇、六八五、六八六)、片岡清(四通=甲一一四、一一五、七〇二、七〇三)、菅沼清(二通=甲一二一、七二二)、澤田初男(一〇通=甲一二六~一三二、四三六~四三八)、滝口和彦(五通=甲一三五~一三九)、秦徳太郎(六通=甲一五一~一五六)、池田康夫(二通=甲一六七、四五五)、黒川勉(五通=甲一七〇~一七二、四四〇、四四一)、和野卓也(二通=甲一八五、四六四)、内田隆(四通=甲一八九、一九〇、五〇六、五〇七)、平良正秀(三通=甲一九三、一九四、五〇九)、込山宗一郎(甲二〇一)、岩元研一郎(二通=甲二〇八、五六七)、今井功(四通=甲二一三、四七〇~四七二)、山本智義(二通=甲二一六、四七四)、早川輝雄(八通=甲二二一~二二八)、桑原義征(三通=甲二三一~二三三)、西口芳朗(二通=甲二四五、二四六)、樋口康(二通=甲二五八、二五九)、宮崎誠司(二通=甲二七二、二七三)、大森公武(六通=甲二八三~二八八)、内藤修(二通=甲二九一、二九二)、門間誠也(二通=甲三一一、三一二)、百瀬博志(三通=甲三一八~三二〇)、上野山由治(七通=甲三二八~三三四)、石島龍一(甲三三七)、貝阿彌晃(甲三四八)、清水雪子(甲三六〇)、大野均(二通=甲三六九、三七〇)、森下孝之(二通=甲三八一、三八二)、山田光男(三通=甲三九三~三九五)、船附昭裕(三通=甲三九八~四〇〇)、鈴木寿美(二通=甲四一二、四一三)、武重雅美(二通=甲四二三、四二四)、杉浦勇次(甲四八二)、山本克治(甲四九二)、福原考幸(甲五一七)、赤羽謙次(五通=甲五二九~五三三)、飯塚浩司(甲五三六)、熊木康昭(二通=甲五五五、五五六)、齊藤秀男(甲五七五)、宮崎忍(二通=甲五九九、六〇〇)、齊藤勇喜(二通=甲六三三、六三四)、関口龍哉(二通=甲六五八、六五九)、野口勝康(甲七一三)、大山啓一郎(一四通=甲七五八~七七一)、山下俊治(一四通=甲七七八~七九〇)、大谷範男(二三通=甲七九四~八一六)、菊地守(=須賀守)(二四通=甲八一八~八四一)

一  別表1の被欺罔者欄記載の者にかかる次の書面(各対応の番号の事実について)

1 番号三、四、七、八(藤沼正)、一〇、一一、二二(二名)、二五、二七、二九、三二、三三、三六(四名)の被欺罔者作成の各答申書(甲五三、五四、六二、七〇、七三、七四、一四二、一四三、一四六、一五〇、一六一、一六五、一六六、一八〇~一八三)

2 番号二九、三六(堀米勝美)の被欺罔者作成の各被害届(甲一六〇、一七九)

3 番号一、二、六、八(藤沼光行)、九、一三~一六、一九~二一、二四、二六、二八、三〇、三一、三五、三七~四四の被欺罔者の司法警察員に対する各供述調書(甲五〇、五二、六一、六九、七一、八二、九三、九五、九六、一一八、一二〇、一二四、一四五、一四九、一五九、一六二、一六三、一七七、一八四、一八八、一九七、一九八、二〇〇、二〇四、二一一、二一九)

4 番号一、五、九、一二~一四、一七~一九、二一、二三、三一、三四、三五、四〇、四二~四四の被欺罔者の検察官に対する各供述調書(甲五一、六〇、七二、七八、八三、九四、一〇〇、一一三、一一九、一二五、一四四、一六四、一六九、一七八、一九九、二〇五、二一二、二二〇)

一  別表2の被欺罔者欄記載の者にかかる次の書面(各対応の番号の事実について)

1 番号一~六、一〇(二名)、一一~一四、一五(二名)、一六、一七、一九、二〇、二二、二三(二名)、二五、二六、二八(高原清一)、三〇~三四、三五(四名)、三六、三九、四一、四三(五名)、四四~四六、四七(三名)、四八(二名)、四九~五一、五二(三名)、五三~五五、五六(二名)、五八、五九、六〇(二名)、六一、六二、六四~七五、七七、七八、八〇~八二、八三(二名)、八四~一〇七、一〇八(二名)、一〇九~一一一、一一二(二名)、一一三~一一九、一二〇(四名)、一二一~一三一、一三二(二名)、一三三~一三六、一三七(二名)、一三八~一四一、一四二(二名)、一四三(二名)、一四四~一四七、一四九~一六三、一六四(五名)、一六五、一六六(三名)、一六七(二名)、一六八~一七五、一七六(二名)、一七七(二名)、一七八~一八七、一八八(二名)、一八九、一九〇、一九一(二名)、一九二~一九四、一九五(二名)、一九六~二〇六、二〇七(二名)、二〇八~二一二、二一三(二名)、二一四、二一五(二名)、二一六~二一九の被欺罔者作成の各答申書(甲二三六~二三九、二四一、二四二、二五二~二五七、二六二~二六五、二六九、二七〇、二七六~二七八、二八〇、二八一、二九六、二九九、三〇〇、三〇二~三〇四、三〇六~三一〇、三二三、三二五、三四一~三四三、三四五~三四七、三五一、三五三~三五九、三六三~三六五、三六七、三六八、三七三、三七五~三八七、三八〇、三八五、三八六、三八八~三九〇、三九二、四〇三、四〇四、四〇六~四一一、四一六~四一八、四二一、四二二、四三〇~四三五、四四三~四四八、四五〇~四五四、四五八、四五九、四六一~四六三、四六六~四六八、四七六~四八一、四八五~四九〇、四九六、四九八、五〇〇~五〇二、五〇四、五一一~五一六、五二〇、五二三~五二七、五三五、五三九、五四一、五四三、五四六~五四八、五五〇、五五三、五六〇~五六二、五六四~五六六、五六九~五七四、五七九、五八〇、五九二~五九六、五九八、六〇三、六〇六~六一〇、六一三、六一四、六一六~六二二、六二五~六三〇、六三二、六三七、六四〇、六四二~六五〇、六五二~六五五、六六二~六六七、六七一~六七六、六七九~六八四、六八八~六九二、七〇〇、七〇一、七〇五~七〇九、七一一、七一二、七一六、七一七、七一九~七二一、七二四~七二六、七二八、七三〇、七三二、七三三)

2 番号二九、三五(石川郁二)、四三(大津行祥)、九一、九六、九八、一一四、一三〇、一三一、一三二(山仲生男)、一三六、一四六、一四八、一五六、一六三、一六九、一七一、一七二、二一六~二一八の被欺罔者作成の各被害届(甲二九七、三〇五、三四〇、四四九、四五七、四六〇、四九五、五四〇、五四二、五四五、五五九、五七八、五八一、六〇五、六一五、六三一、六三九、六四一、七二七、七二九、七三一)

3 番号七、八、一八、二四、二八(八木康行)、三七、三八、四〇、四二、五七、六三、七六、七九(二名)の被欺罔者の司法警察員に対する各供述調書(甲二四三、二四四、二六六、二七九、二九五、三一五、三一七、三二四、三二六、三七九、三九一、四一九、四二七、四二八)

4 番号四、九、二一、二七、二九、三七、四二、四三(小俣弘運)、四五、五二(吉田喜一郎)、五三、六〇(武藤朗)、六六、七六、七九(川内信行)、一〇三、一一三、一一八、一二八、一三四、一三七(小林由美)、一四八、一五五、一七〇、一八七、二〇九の被欺罔者の検察官に対する各供述調書(甲二四〇、二四九、二七一、二八二、二九八、三一六、三二七、三四四、三五二、三六六、三七四、三八七、四〇五、四二〇、四二九、四六九、四九一、五〇三、五二八、五五二、五六三、五八二、六〇四、六三八、六六八、七一八)

一  湖山佳子作成の訂正届(甲七一〇)《別表2の番号二〇六の事実について》

一  検察官作成の捜査報告書七通(甲一七、一九、二〇《別表1の全事実について》、二一~二三《別表2の全事実について》、二四)

一  検察事務官作成の次の書面

1 捜査報告書(甲一)

2 電話聴取書(甲三〇一)《別表2の番号三一の事実について》

一  司法警察員作成の次の書面

1 捜査関係事項照会書(謄本)一二通(甲二、四、六、八、一〇、一二、一〇一《別表1の番号一七の事実について》、一〇三《右同》、一四七《同二五の事実について》、二五〇《別表2の番号九の事実について》、二六七《同一八の事実について》、五二一《同一二三の事実について》)

2 押収品複製入手報告書三通(甲一四~一六)

3 修正捜査報告書二通(甲二五、二六)

4 資料作成報告書(甲二七)

5 騙取年月日訂正報告書(甲一八)《別表1の番号一一、別表2の番号一、八、二五、三五、五二、一三二、一六一、一七七、一八一、一八七の各事実について》

6 振込送金先確認捜査報告書四通(甲四九七《別表2の番号一一四の事実について》、五四四《同一三一の事実について》、五四九《同一三三の事実について》、五五一《同一三四の事実について》)

7 電話聴取結果報告書(甲五〇五)《同一一九の事実について》

8 欺罔場所住居表示確認捜査報告書(甲五五四)《同一三五の事実について》

9 電話聴取報告書(甲五八三)《同一四八の事実について》

10 捜査報告書(甲五九七)《同一五三の事実について》

一  次の銀行等が作成した各捜査関係事項照会回答書

第一勧業銀行新宿支店(甲三)、三菱銀行新宿支店(甲五)、住友銀行新宿支店支店長(甲七)、富士銀行新宿支店(甲九)、太陽神戸三井銀行新宿支店(甲一一)、常陽銀行新宿支店支店長(甲一三)、太陽神戸三井銀行新宿支店(甲一〇二)《別表1の番号一七の事実について》、第一勧業銀行赤羽支店(同一〇四)《右同》、さくら銀行新宿御苑前支店支店長(甲一四八)《同二五の事実について》、住友銀行新座志木支店(甲二五一)《別表2の番号九の事実について》、三菱銀行有楽町支店(甲二六八)《同一八の事実について》、東海銀行上野支店(甲四九九)《同一一五の事実について》、富士銀行東武練馬支店(甲五二二)《同一二三の事実について》、三菱銀行竹町支店(甲六五一)《同一七七の事実について》

一  登記官作成の登記簿謄本三通(甲二八、三二、三六)及び閉鎖登記簿謄本七通(甲二九~三一、三三~三五、三七)

判示第二の事実について

一  併合前の第一回丸西公判調書中の被告人丸西輝男の供述部分

一  被告人丸西輝男の検察官に対する供述調書五通(丸西乙一~五)

一  次の者の検査官に対する各供述調書

大山三芳(丸西甲四)、水野健(同五)、津野悦子(同六)、森孝太郎(同七)、長部繁幸(二通=同八、九)、石井猛雄(同一〇)、清水一夫(同一一)、石坂保重(同一二)、米田建三(同一三)、渡邉公夫(同一四)、市川満幸(二通=同一五、一六)、弘瀬郁子(同一七)、大山正芳(六通=同一八~二三)、古屋親彦(三通=同二四~二六)

一  大蔵事務官作成の次の書面

支払手数料調査書(丸西甲一)、代行店支払手数料調査書(同二)、消耗品費調査書(同三)

一  登記官作成の登記簿謄本(丸西甲二七)及び閉鎖登記簿謄本三通(同二八~三〇)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成四年押第一〇五二号の1)

判示第三の各事実について

一  併合前の第一回古屋公判調書中の被告人古屋親彦の供述部分

一  併合前の第二回古屋公判調書中の証人矢部晃久の供述部分

一  被告人古屋親彦の検察官に対する供述調書五通(古屋乙一~五)

一  次の者の検察官に対する各供述調書

市川満幸(古屋甲二)、矢部晃久(四通=同三~六。但し、三、四、六についてはいずれも不同意部分を除く)、小林晴彦(二通=同八、九。但し、九については不同意部分を除く)、丸西輝男(二通=同一〇、一二。一二は謄本)

一  大蔵事務官作成のリベート収入調査書(古屋甲一)

一  登記官作成の登記簿謄本(古屋甲一三)及び閉鎖登記簿謄本(三通=同一四、一五)

判示第三の一の事実について

一  丸西輝男の検察官に対する供述調書(古屋甲一一)

判示第三の二の各事実について

一  大蔵事務官作成の生命保険料控除調査書(古屋甲二〇)及び損害保険料控除調査書(同二一)

判示第三の二の1の事実について

一  押収してある平成元年分の所得税確定申告書一袋(平成四年押八一一号の1)

判示第三の二の2の事実について

一  押収してある平成二年分の所得税確定申告書一袋(同押号の2)

(法令の適用)

一  被告人島田清志、同青柳正明、同蓮見四郎、同大山正芳及び同半澤隆について

1  右被告人五名の判示第一の各所為は、いずれも別紙1及び2の各犯罪事実一覧表(以下「別表1」「別表2」という)の各被欺罔者ごとに刑法六〇条、二四六条一項に該当するところ、別表1の番号(番号は別表では算用数字で表示されているが、本項では便宜上漢数字で表記する)八、二二、三六、別表2の番号一〇、一五、二三、二八、三五、四三、四七、四八、五二、五六、六〇、七九、八三、一〇八、一一二、一二〇、一三二、一三七、一四二、一四三、一六四、一六六、一六七、一七六、一七七、一八八、一九一、一九五、二〇七、二一三、二一五の各所為は、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条によりそれぞれ一罪として犯情の(最も)重い各被欺罔者欄の右端に記載の者(但し、別表2の番号一二〇については黒須好三郎、同一七七については水ノ江博巳)に対する詐欺罪の刑で処断することとする。

2  そして、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い別表2の番号五七の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人島田清志を懲役三年に、同青柳正明を懲役三年六月に、同蓮見四郎を懲役三年に、同大山正芳を懲役三年に、同半澤隆を懲役二年六月にそれぞれ処し、同法二一条を適用して、未決勾留日数中、被告人島田清志、同青柳正明、同蓮見四郎及び同大山正芳に対しては各四〇〇日を、被告人半澤隆に対しては一三〇日をそれぞれその刑に算入し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から、被告人島田清志及び同大山正芳に対し各五年間、被告人半澤隆に対し四年間それぞれその刑の執行を猶予し、訴訟費用(島田清志の国選弁護人に関する分)については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人島田清志に負担せることとする。

二  被告人丸西輝男について

1  被告人丸西輝男の判示第一の各所為については、前記一1と同一の法令を適用する。同被告人の判示第二の所為は、法人税法一五九条一項(但し、罰金刑の寡額の関係で、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項を適用)に該当するので、所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択した上、情状により法人税法一五九条二項を適用する。

2  同被告人の以上の各罪は、刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑期及び犯情からして最も重い判示第一の別表2の番号五七の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、その刑期及び所定金額の範囲内で同被告人を懲役七年及び罰金八〇〇〇万円に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中四〇〇日を右懲役刑に算入し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金四〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

三  被告人古屋親彦について

1  被告人古屋親彦の判示第一の各所為については、前記一1と同一の法令を適用する。同被告人の判示第三の一の所為は、包括して平成二年法律第六四号附則二五条により同法律による改正前の商法四八六条一項に、判示第三の二の1及び2の各所為は、いずれも所得税法二三八条一項にそれぞれ該当する(以上の各罰金刑の寡額の関係につき、いずれも前記二1と同様)ので、判示第三の一の罪について所定刑中懲役刑を選択し、判示第三の二の1及び2の各罪について所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択した上、情状により同条二項を適用する。

2  同被告人の以上の各罪は、刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑期及び犯情からして最も重い判示第一の別表2の番号五七の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条二項により判示第三の二の1及び2の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で同被告人を懲役五年六月及び罰金一五〇〇万円に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中四七〇日を右懲役刑に算入し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

(若干の補足説明と量刑の事情)

※ 本項においては、まず、判示第一の詐欺事件の犯行に至る経緯、犯行後の事情、各被告人の役割等を説明するが、これは、量刑の理由の一部をなすとともに、弁護人から被告人らの罪責の存否等に係わる主張も若干なされているので(特に被告人大山関係)、これらの主張に対する判断の関係では、事実認定の補足説明の意味をも有するものである。次いで、弁護人の主張のうち主要なもの(犯情に関するものを含む)に対する判断を示しつつ、当裁判所が量刑上特に考慮した事情を説明していくことにする。なお、各被告人を個別に表示するに当たっては、被告人の記載を省略し、かつ姓のみによることがあり、判示第一の事実を単に「本件」ということがある。

第一判示第一の詐欺事件の犯行に至る経緯等

判示第一の事実に関する前掲各証拠を総合すると、以下のとおりの事実が認められる。

一  ケン・インター及び三輝の概要並びに両社における被告人らの地位等

1 分離前相被告人水野健(以下「水野」という)は、昭和四七年ころから、ゴルフ場の開発と会員権販売を順次手掛け、昭和五二年には、他の会社を買収して商号変更した、ゴルフ場の経営等を目的とする水野興業株式会社(以下「水野興業」という)の代表取締役に就任し、その後は同社を中核とする関連会社において、ゴルフ場開発事業等を展開していた。なお、水野興業は、昭和六二年一一月、商号をケン・インターナショナル株式会社(略称ケン・インター)に変更するとともに、東京都中央区銀座一丁目六番八号に本店を移転した。

ところで、水野は、会員権販売によって資金を集めるため、同人が手掛けたゴルフ場において、公称の募集予定会員数を大幅に超える会員を募集したので、ゴルフ会員権販売業界では「乱売の水野」という悪評が立つ存在であった。

2 島田清志は、大学卒業後に勤務した幾つかの会社で経理を担当していたが、昭和五七年三月、水野興業に取締役待遇で入社し(同年一二月に取締役として登記)、昭和六二年九月ころ専務取締役に昇進してからは、ケン・インター及びその関連会社全体の経理、総務を統括していた。

3 丸西輝男は、高等学校卒業後、家業への従事や喫茶店経営等を経て、昭和五〇年ころから昭和五八年ころまで、ゴルフ会員権の販売を行う株式会社ローデム及び株式会社タクト(以下「ローデム」、「タクト」という)に勤務し、その後は、右両社での経験を生かして、三輝商事の屋号で自らゴルフ会員権販売業を営み、昭和五九年八月にはこれを法人化して、東京都渋谷区代々木一丁目三二番一号に本店を置く株式会社三輝(略称三輝)を設立し、代表取締役に就任して同社の業務全般を統括していた。

なお、三輝は、販売量及び従業員の増加に伴い、昭和六一年八月同都新宿区新宿三丁目三五番三号に、昭和六三年四月には同区歌舞伎町二丁目一六番九号に、それぞれ本店を移転した。

4 古屋親彦は、高等学校を中途退学した後、数年おきに職を転々とし、昭和五九年には会社経営に失敗したが、縁戚関係にある丸西の計らいで、昭和六〇年ころから三輝の仕事を手伝うようになり、昭和六一年四月ころ正式に入社し、まもなく専務取締役に、平成元年一月ころ取締役副社長に順次就任し、丸西の片腕的存在として三輝の業務全般を掌理していた。

5 青柳正明は、中学校卒業後、キャバレーのボーイ等を経て、昭和五三年から昭和五九年ころまで、前記ローデム、タクトに勤務してゴルフ会員権の販売に従事し、この間に丸西らと知り合い、その後は三輝商事の手伝いを経て、三輝設立と同時に取締役に就任し、さらに、昭和六三年三月ころ常務取締役営業本部長に、平成元年一月ころ専務取締役に順次昇進し、三輝が直接行う会員権販売業務全般を統括していた。

6 蓮見四郎は、高等学校卒業後、百貨店勤務を経て、昭和五三年ころから昭和五八年ころまで、前記ローデム、タクトに勤務してゴルフ会員権の販売に従事し、この間に丸西や青柳と知り合い、その後は三輝商事の手伝いを経て、三輝設立と同時に三輝に入社し、昭和六一年八月ころ取締役に、昭和六三年三月ころ取締役業務本部長に順次就任し、三輝が会員権販売を委託した代理店全体を統括していた。

7 大山正芳は、大学卒業後、税理士事務所の手伝いを経て、昭和三七年に税理士資格を取得し、翌年には会計事務所を開設したが、多額の負債を抱えたため、昭和五一年に同事務所を閉鎖し、その後は不動産会社で経理を担当するなどしていたが、昭和六〇年二月ころ、古屋の誘いで三輝の顧問税理士となり、昭和六一年八月経理担当取締役に、昭和六三年五月ころ取締役経理本部長に順次就任し、三輝の経理全般を掌理していた。

8 半澤隆は、大学を中途退学した後、数年おきに職を転々とし、昭和五九年一〇月ころから、ゴルフ会員権販売業を営む鹿島商事株式会社で営業員として働いたが、昭和六〇年九月三輝に入社し、営業員として会員権の販売に当たり、昭和六一年一〇月営業部次長に、昭和六三年九月営業部長に順次昇進した。

二  ゴルフ会員権販売と適正会員数

1 いわゆる預託金会員制のゴルフ場の会員権(本判決ではこれを単に「ゴルフ会員権」又は「会員権」と表記している)の本質的内容は、会員がゴルフ場施設を継続的に利用することであるが、これが確保されるためには、実際に募集する会員数が、ホール数等の当該ゴルフ場施設の規模に応じた適正なものでなければならず、ゴルフ業界においては、会員が少なくとも月に一回、週休日又は祝祭日に当該ゴルフ場を利用できる範囲内の会員数(立地条件等にもよるが、東京近郊の一八ホールのゴルフ場の場合は正会員が一八〇〇人程度である)が適正なものといわれている。そして、会員権が乱売され、適正会員数を大幅に超える会員募集がなされた場合には、会員が実際にプレーをすることが事実上不可能になるか、その機会が極めて限定されることになるから、施設利用権はほとんど無意味なものになる。

2 また、会員は、ゴルフ場の事業者に対し、会員権購入の際に支払った預託金の返還請求権を有しているが、会員契約において、その行使を一〇年以上据え置く旨の約定がなされるのが普通であり(本件の茨城カントリークラブの会員権には、預託金の据置期間がゴルフ場オープン後一五年間で、これを事業者側でさらに一〇年以内の期間延長できる旨の約定が付いている)、据置期間が経過した後においても、会員契約を解除して預託金の返還を求めるものは少なく、会員権の売買によって会員の地位の譲渡がなされるのが通常である。そして、譲渡禁止特約等がなく流通性を有するゴルフ会員権は、投資の対象にもなりうるが、適正会員数を大幅に超えるゴルフ場の会員権は、流通をほとんど期待できないから、投資対象財産としての価値も極めて乏しいものになる。

3 そして、以上のことは、ある程度の期間、ゴルフ会員権販売業界に身を置いた者であれば、当然に理解している事柄であった。

三  三輝の本件以前のゴルフ会員権販売状況

1 三輝は、当初、ゴルフ場経営会社から会員権の販売を一手に引き受ける総代行店の孫請けの販売代理店にすぎなかったが、顧客に対しては強気で接し、ダンピングは一切しないという丸西の営業方針のもと、顧客の購買意欲を煽る巧みなセールストークや古屋の発案による新聞広告を駆使し、比較的安価な大衆向けのゴルフ会員権を大量に販売し、営業実績を伸ばしていった。

2 この間の昭和六一年八月、三輝は、水野がケン・インターの関連会社を通じて開発していた千葉県香取郡所在の東京国際空港ゴルフ倶楽部の会員権を株式会社日本ゴルフ証券から買い取って販売するようになり、その後、丸西と古屋が水野に直接会って交渉し、同年一一月には、三輝が右ゴルフ倶楽部の会員権販売の代理店になった。三輝では、既に乱売が問題となっていた右ゴルフ倶楽部の会員権を、ダンピングすることなく大量に販売したため、水野は三輝の販売能力を高く評価するようになった。

3 そして、右ゴルフ倶楽部の会員権は、一八ホールの同倶楽部が仮オープンした昭和六二年六月の時点で、公称の募集予定会員数(正会員約一八〇〇人)を大幅に超える二万人以上に販売されていたため、仮オープン後まもなく、プレーの予約が取れない会員からの苦情の電話が三輝にも殺到し、三輝ではその対応に追われていた。そして、丸西ら三輝側の被告人がこのような状況を認識していたのはもちろんであるが、水野と島田も、三輝側から苦情を処理するためのプレー枠の確保を要請されたことなどから、一八ホールのゴルフ場で二万人を超える会員を募集した場合には、プレーの予約がほとんど取れない状態になることを認識していた。

四  茨城カントリークラブの会員権販売に至る経緯等

1 水野は、かねてから、会員数と会員資格を限定した高級ゴルフ場を経営し、前記のような「乱売の水野」という悪評を払拭するとともに、ゆくゆくはアメリカ合衆国にゴルフ場等を建設して永住をしたいと思っており(すでに同国で事業を展開していた)、これらの事業資金をゴルフ会員権を大量に販売することによって捻出しようと考えていた。そして、昭和六三年二月ころ、株式会社常陸観光開発(略称常陸観光開発)が茨城県高萩市内で開発を進めていた大能カントリークラブ(後に茨城カントリークラブと名称変更。以下「茨城カントリー」ともいう)の開発権を取得すべく、ケン・インターの方で同社を買収することを決め、そのころ、島田に対し、茨城カントリー関係の経理全般を担当するよう指示した。そして同年三月一七日、ケン・インターは常陸観光開発を買収した。

2 この間の同年二月下旬ころ、丸西と古屋は、水野に呼ばれて東京都港区内のケン・インターの会社事務所(以下「ケン・インター事務所」という)へ行ったところ、三輝の販売能力を高く評価していた水野から、「三輝を茨城カントリーの会員権販売の総代行店にするつもりだが、このゴルフ場開発に当たって自分の名前は表に出さず、表面上は三輝が開発するということで会員権を販売してほしい」などという話を持ち掛けられた。丸西と古屋は、総代行店になれば大きな利益が見込める上、業界における三輝の格付けも上がると考えてこれを承諾した。さらに、その翌日ころ、水野に呼ばれて再びケン・インター事務所へ赴いた丸西と古屋は、水野から、「茨城カントリーの会員権は一本一五〇万円くらいから売り出し、最終的には五〇〇億円くらいの資金を集める」などと大量販売の意向を伝えられたが、その際、水野の提案に基づき、ケン・インターと三輝は、会員権販売によって得た資金を半分ずつ運用する代わりに、それぞれの半使い分から、ケン・インターはゴルフ場開発関係の費用を、三輝は会員権販売関係の費用を負担するという合意がなされた(以下この合意を「半使いの約束」という)。

丸西と古屋は、まもなく三輝の役員会議を開いて、右のような水野との話合いの経過や内容を伝えたが、出席者の青柳、蓮見、大山も、三輝が大きな利益を上げれば自分たちの収入も大幅に増えるなどと考えてこれに賛成した。他方、島田も、水野から右のような話合いの内容等を聞いてこれを認識していた。

3 右のようなケン・インターとの話合いを受けて三輝では、同年三月ころから社内組織の拡充を進め、会員権の販売を委託する代理店の管理を統括する部門として、蓮見を本部長とする業務部を新設し、そのもとで代理店の開拓及び系列化を推進した。また、青柳を本部長とする営業部でも、本部長のもとに部長、次長、班長、販売員という職制を敷き、その後も順次、新たな販売員を採用したり、水戸市と松戸市に営業所を開設するなど販売体制の強化を図っていった。

4 丸西と古屋は、右2の話合いの後も水野と頻繁に協議を重ね、茨城カントリーの会員権の当初の販売価格(入会金と預託金)は一八〇万円とし、その後は二〇〇万円、二三〇万円と価格を上げていくことなどを決めたが、同年七月一三日には、ケン・インター事務所で水野から、会員権の販売実績にかかわらず販売を開始する同年一一月から翌年一二月までの間に合計六八億円をケン・インター側に入金すること、右の期間に最低三七二億円を売り上げることを要求された上、三者間でこのことを確認する意味で、その内訳を書いたメモに署名するよう求められた。丸西と古屋は、三輝側にとって厳しい数字であると考えて承諾をためらったものの、結局は水野とともに右メモに署名し、その直後に水野から、さらに、右メモは最低の数字にすぎないので、一年間で五〇〇億円を売り上げる目標で販売計画を立てるよう強く求められるに至り、三輝にとって大きなメリットのある半使いの約束のことなどを考え、これに応じた。

5 三輝に戻った丸西と古屋は、早速役員会議を招集し、出席した青柳、蓮見、大山に対し、右メモを示しながら水野が要求する販売目標金額等を説明するとともに具体的な販売計画について相談し、その後も、古屋を中心に販売部門を担当する青柳、蓮見が検討するなどした結果、まもなく三輝では、昭和六三年一一月から翌年一〇月まで一年間に合計で二万四五〇〇本、四九七億円の会員権を販売する計画がまとまったが、その具体的内容は次のとおりであった(括弧内は販売単価及び販売本数)。

昭和六三年一一月 一八億円(一八〇万円×一〇〇〇本)

一二月 二七億円(一八〇万円×一五〇〇本)

翌年一月 三六億円(一八〇万円×二〇〇〇本)

二月 七二億円(一八〇万円×四〇〇〇本)

三月から 六月 合計一六〇億円(二〇〇万円×各月二〇〇〇本)

七月から一〇月 合計一八四億円(二三〇万円×各月二〇〇〇本)

6 昭和六三年七月二八日、ケン・インター事務所において、ケン・インター側から水野、島田ら、三輝側から丸西、古屋、青柳、蓮見らが出席して、会員権販売計画についての最終的な協議がなされたが、その席上、三輝側から右5の販売計画を記したメモや、公表の募集予定正会員数を一八三〇人とするパンフレット及び募集要項のゲラ刷り等が示され、水野及び島田もこれらの内容を了承した。その際、水野は、販売を担当する青柳、蓮見にも、右メモの内容が達成可能であるか念を押すとともに、三輝側の出席者に対し、「短期間で勝負しろ。一年間で五〇〇億円を集めろ」などと発破をかけた。なお、大山も、まもなく丸西らから右の経過を聞かされた。

7 ところで、三輝営業部においては、会員権の販売開始が迫った同年秋ころ、青柳、半澤らによって販売員に対し、従来のものを基礎にしたセールストークの指導がなされていたが、その内容は、「茨城カントリーの募集会員は、正会員が一八三〇人で、平日会員は一〇〇〇人の合計二八三〇人だけです。ですから、いつでも好きなときにゆっくりプレーできます」、「この二八三〇人という会員数は、限定会員数で茨城県に届けているし、コース設計・監修を担当した有名なアメリカのプロゴルファーのヒューバート・グリーンとも会員数を限定すると約束しています。施工も一流大手の熊谷組が担当するから間違いないし、水増しの会員募集を行うこともありません」などと顧客に説明したり、会員権購入を迷っている顧客に対しては、まもなく募集予定人員に達してしまうように装ったり、いったん定員に達したが、キャンセルが出たのでその枠を回すと言って購入を勧めるなどというものであった。

8 なお、三輝の取締役ではなかった半澤は、茨城カントリーの会員権販売が水野から持ち込まれたもので半使いの約束があることや、右5のような販売計画の詳細については聞かされていなかったが、同年九月下旬ころ都内のホテルで開かれた茨城カントリー開設記念レセプションに出席した際、三輝の他の被告人らとともに、別室で控えていた水野と会ったこと、半澤も出席した同年一〇月二一日の班長会議において、古屋が右計画のうち翌年二月分までの数字を書いて販売を指示したことなどから、茨城カントリーには水野が絡んでおり、三輝ではその会員権を大量に販売する計画であることを明確に認識した(半澤はそれまでも、そのように推測してはいた)。

五  平成元年九月末までの会員権販売状況等

1 茨城カントリーについては、昭和六三年一〇月三一日付けで茨城県知事の開発許可が下り、同年一一月一〇日から三輝において会員権の販売を開始したが、それまでの大々的な新聞広告に加え、厳しいノルマを課された三輝営業部の販売員が、青柳や半澤の指揮のもと、自己の販売成績を伸ばして高額の歩合給を獲得すべく、顧客の購買意欲を煽る巧みなセールストークを駆使して販売に当たった結果、平成元年九月末までには、系列の販売代理店による販売分と合わせると、会員権は二万四〇〇〇人を超える顧客に販売され、販売金額の合計は約四二〇億円に達していた。それに伴って、三輝側の被告人らの個人収入は、それまでよりも大幅に増えた。

2 ところで、会員権購入者が支払うべき代金は、原則として、株式会社住友銀行(以下「住友銀行」という)等の六つの銀行の各新宿支店に大山があらかじめ開設していた「茨城カントリークラブ株式会社常陸観光開発」名義の普通預金口座(以下「六行口座」という)に振り込まれていたが、三輝経理部では大山を中心に、銀行振込、現金払い等の支払方法別の入金状況や当日までの入金額の累計を記載した日計表や売上表を毎日作成し、これらを丸西と古屋に提出して報告していた。また、営業部では青柳、半澤を中心に直販部門の会員権販売本数を、業務部では蓮見を中心に代理店の販売本数を毎日まとめ、それらを記載した報告書を丸西と古屋に提出していた。

3 他方、水野は、昭和六三年一一月三〇日、半使いの約束によって三輝から送金を受けるため、住友銀行下高井戸支店に「株式会社常陸観光開発専務取締役古屋親彦」名義の普通預金口座を開設した上、古屋に送金を指示して、平成元年九月までは右口座に六行口座等から送金を受け、さらに、島田に命じて必要な都度これを引き出させ、資産購入のため海外送金するなど茨城カントリーとは無関係の用途に使っていた。この間、水野の指示を受けた島田は、大山に六行口座の預金通帳の写しを届けさせるなどして、会員権購入者からの入金状況を把握するとともに、ケン・インター側への送金状況を確認し、随時、これらの結果を水野に報告していた。

4 同年一〇月九日ころ、水野は、三輝がオーストラリア等でゴルフ場を中心としたリゾート開発に乗り出そうとしている動きを察知して不審を抱き、島田に対して、前月末までの茨城カントリーの会員権販売による総入金額、さらには半使いの約束に基づくケン・インター側への総送金額を調査して報告するよう命じた。そこで、島田は、大山にその旨を伝えるとともに、自らも三輝から入手していた資料等に基づいて確認したところ、同年九月末までの会員権購入者からの入金は手形による支払分を除き合計四一九億円余、ケン・インター側への送金は合計二〇六億円余であることがわかったので、それらを集計表にまとめて水野に報告した。

5 一方、大山は、三輝経理部に指示してまとめさせた集計表によって、同年九月末までの会員権購入者からの入金は、手形による支払分を含め合計四五二億円余、ケン・インター側への送金は、手形によるものも含め合計二二七億円余であることを知った。そして同年一〇月一三日ころ、丸西と古屋が、三輝を訪れた水野に対し、右集計表に基づく報告をした。

6 このようにして、水野、島田、丸西、古屋、大山は、平成元年九月末までの会員権販売状況をほぼ正確に把握していた。また、三輝の販売部門を指揮していた青柳、蓮見、半澤も、毎日の仕事を通じるなどして、おおよその販売状況を認識していた。

六  本件犯行(起訴分)を含む会員権販売状況等

以上の経緯により、判示第一のとおり、被告人七名は水野らと共謀の上、同年一〇月中旬ころから同年一二月二八日までの間に、三一三名の顧客を欺いて茨城カントリーの会員権を売り付け、合計七億四四一一万一〇〇〇円の金員(手形小切手によるものを含む。以下同様)を騙取したほか(この起訴分は三輝が直接販売したもののみである)、被告人らは、同様の体制・方法により、同年一〇月から平成三年七月までの間も茨城カントリーの会員権の販売を継続し、約二万七千名の顧客にこれを乱売し、約七三八億円の金員を得ている(起訴分の期間中も販売代理店を通じての販売が並行している。なお、後記のとおり、古屋及び半澤は平成二年中に三輝を退職している)。

結局、被告人らは茨城カントリーの会員権を、前記五の販売分を含め総合計で、五万一千余名の顧客に乱売し、その代金として一一九七億円余の金員を得たものである。

七  会員権乱売事実の隠蔽工作

茨城カントリーの会員権の販売開始後まもなく、一部のゴルフ雑誌に茨城カントリーの会員権が乱売され、それに水野が絡んでいるのではないかという記事が掲載されたが、丸西と古屋の意向を受けた青柳が半澤に指示して、販売員には、そのようなことは事実無根であると顧客に説明するよう周知徹底させた。また、平成元年一〇月ころ、民間の信用調査機関(帝国データバンク)から三輝に対し茨城カントリーの会員数についての度重なる問い合わせがあった際、その対応には大山が当たり、丸西、古屋と相談の上、右機関の担当者に、既に会員数が二万人をはるかに超えていたにもかかわらず、現在の会員数は六五〇〇人である旨の虚偽の回答をし、乱売の風評が広まらないようにした。

八  本件騙取分を含む会員権販売代金の使途その他の関連事実

1 水野と丸西及び古屋は、平成元年一一月二八日常陸観光開発をケン・インターから三輝へ売却する旨(いわゆるM&A)の合意をし、その旨の同年一二月一日付契約書を作成した。そして、その後もケン・インターと三輝との間では常陸観光開発を巡る取引等が行われている。このようなM&A等に伴なって、半使いの約束にも変動が生じたようであるが、その後もM&A関連等幾つかの名目で三輝からケン・インター側に多額の金員が流れ続けている。

2 本件起訴にかかる騙取分を含む茨城カントリーの会員権の販売代金は、前記六のとおり、総額で約一一九七億円にも上ぼるが、その主な使途は、ケン・インター(水野)側においては、アメリカ合衆国でのゴルフ場、リゾート施設、不動産等の買収資金のための海外送金、他から買収した国内ゴルフ場の買収資金等の新規事業への投資、その他国内での不動産投資や借入金の返済等であり、三輝側においては、代理店への販売手数料、事業経費、茨城カントリーの施設工事費のほか、丸西が計画していた総合リゾート開発事業によるゴルフ場開発事業等への投資であった。なお、被告人ら及び水野各個人においても金額に差はあるものの、各会社からの報酬や仮払金等の形で、少なからぬ利益を得ていた。

3 茨城カントリーのゴルフ場施設の工事は、三輝が工事代金の一部(約四六億円)を支払い、途中まで進捗していたが、三輝やケン・インターにおいて工事の残代金を支払わなかったため、ストップし、ゴルフ場施設は現在に至るまで未完成でオープンしないままになっている。

4 古屋は平成二年一一月ころ丸西と不仲になり三輝を退職させられ、半澤は同年八月に関連会社へ出向した関係で同年一二月三輝を退職扱いになっている。三輝及び丸西個人に対しては平成三年一〇月二九日に、ケン・インター及び水野個人に対しては、平成四年四月二八日にそれぞれ破産宣告がなされている。

第二被告人大山の罪責について

一  被告人大山正芳の弁護人は、大山は本件詐欺の実行行為を行っておらず、また、その共謀もしていないので無罪である旨主張する。しかしながら、当裁判所は、大山についても本件詐欺の共同正犯が成立すると認めたので、以下その理由を説明する。

二  まず、本項の第一に記した事実から次のような点を指摘できる(なお、括弧内の数字は、右第一における該当箇所を示す項目番号である)。

1 本件詐欺事件は、茨城カントリーの開発会社を買収したケン・インターとゴルフ会員権販売会社である三輝が、半使いの約束等によって結びつき、会員権の大量販売による資金獲得を企図し、茨城カントリーの会員権販売の総代行店となった三輝において、自社や系列の販売代理店の販売員を動員して、公称の募集予定会員数を大幅に超えて会員権を乱売したという組織的な一連の会員権乱売事件の一部であり、本件を含む右乱売事件には、三輝において販売代金を受領し、そのうちの約半額をケン・インター側に送金するという利得分配の仕組みが伴なっていたものである。

そして、会員権販売に向けた水野との協議は、三輝の丸西と古屋が行っていたが、丸西らは半使いの約束等の内容を三輝の役員会議でも逐次伝えており、取締役であった大山もこれに出席していること(四2、4、5)、このうち昭和六三年七月一三日の役員会議では、一年間で五〇〇億円を売り上げるという水野が要求する販売目標金額等について説明があった上で、具体的な販売計画の検討がなされていること(四5)、その後、大山は丸西から、三輝側で立案した販売計画の内容及びそれを水野が了承したことを聞いていること(四6)などの事実によれば、大山は前記のような本件詐欺事件等の全体構造を認識していたということができる。

2 茨城カントリーの会員権販売に至るまで、水野の意向に沿って事が勧められている上(四2ないし6)、水野は島田に対し、会員権購入者からの入金状況やケン・インター側への送金状況の報告を指示し、その後、三輝の動きに不審を抱いたときも、半使いの約束の履行状況の調査報告を命じている(五3、4)。このように、水野は三輝による半使いの約束の履行に神経をとがらせているのであって、水野と丸西らの力関係をも考慮すると、三輝が総代行店の地位を維持し、引き続き会員権の大量販売による利益を獲得していくためには、水野の意向に沿って半使いの約束を履行することが不可欠であったといわざるを得ない。

そして、茨城カントリーの会員権販売計画は、系列の販売代理店も含め大量の販売員を動員して、一年間に合計で二万四五〇〇本、四九七億円を売り上げるという大掛かりなものであったから(四3、5)、三輝が会社の業務として右会員権販売計画を実行していく上ではもとより、右のように三輝が総代行店の地位を維持するために不可欠な半使いの約束を履行していくためにも、会員権購入者からの入金状況を正確に把握していく必要があったと認められる。そうすると、実際の販売を担当する三輝の営業部や業務部の重要性はいうまでもないが、購入者からの入金状況を把握、管理する経理部の組織上の役割も相当に重要であって、営業部門と経理部門は本件詐欺事件を支える車の両輪の関係にあったといっても必ずしも過言ではないのである(もっとも、前者の方がより重要であることは否定できない)。

ところで、大山は、三輝の経理本部長として経理責任者の立場にあったもので(一7)、購入者が代金を振り込むための六行口座を開設したのをはじめ、会員権の販売開始後は、経理部を指揮して入金状況等を記載した日計表や売上表を毎日作成して丸西らに報告するとともに、ケン・インター側の経理を担当していた島田に対し、入金状況に関する資料を渡す(五2、3)など経理部を指揮し、経理面についてケン・インター側との連絡役を務めるという重要な役割を果していたものである。加えて、茨城カントリーの会員権販売が始まるとともに、大山の収入も増えており(五1)、大山個人も右販売により経済的な利益を得ているということができる。

三  次に、前掲の関係各証拠によれば、右二でみた以外にも、大山は次のような役割を果たしていることが認められる。

1 ケン・インター側との間で、三輝が取得する販売手数料率は、会員権の総販売金額の三五パーセントということになっていたが、未だ口約束にとどまっていたため、大山はこれを書面化しておく必要があると考え、昭和六三年一二月ころ、丸西と古屋の了解を得て島田にその旨申し入れ、水野の了解を得た島田との間で、右の約定を盛り込んだ契約書を作成した。

2 平成元年一〇月中旬から下旬にかけて、信用調査機関や取引銀行から茨城カントリーの現在までの会員数について問い合わせを受けた際、大山は、古屋の指示により、現在の会員数が約六五〇〇名である旨虚偽の情報を伝達した。

3 三輝は、同年一一月二八日、ケン・インターから常陸観光開発を買収したが、これに関連して大山は古屋の指示により、経理部を指揮して、これまでに半使いの約束に基づいてケン・インター側に送金した分を調査して精算作業をし、同月二七日に島田との間で最終的な精算結果の確認をした。

四  本件のような組織的な経済事犯においては、その犯罪を計画・遂行する組織の中枢において重要な役割を果たした者は、末端の直接的実行行為担当者(会員権販売員ら)よりもはるかに重い罪責を負うべきものであることは、いうまでもないところである。大山は、以上みたとおり、本件詐欺事件等の全体構造を認識した上で、会員権の販売を担当する営業部門と並んで組織上重要な役割を担っていた経理部の責任者として、購入者からの入金状況を管理、報告するとともに、経理面において、ケン・インター側との連絡役を務めていた上、そのほかにも会員権の乱売が発覚しないための工作に関与するなどしているのであって、これらを総合考慮すると、大山が本件詐欺事件について共同正犯としての罪責を負うことは明らかというべきである。

なお、弁護人は、秘書室長弘瀬郁子の存在等を指摘し、大山には決裁権、裁量権がなく、営業部門に関与していないことを強調するが、本件詐欺事件における大山の罪責を決するに当たっては、大山が現実に果たした役割こそが重要であるというべきであり、この点に関する前記認定は、弘瀬が丸西の秘書として有していた実質的な発言権・影響力等がどの程度のものであったかによって、何ら左右されないし、また、大山は経理部の責任者であって営業部門に関与していないことはそのとおりであるが、組織的犯行である本件詐欺事件において、半使いの約束との関係などから、経理部の組織上の役割も重要であることは右二で指摘したとおりである。

第三本件詐欺の犯情等(被告人らに共通の情状)

一  本件詐欺事件は、茨城カントリーの開発会社を買収したケン・インター及びゴルフ会員権販売会社の三輝の各代表者・役員等である水野健及び被告人七名が、会員権の大量販売による資金獲得を企図し、これによって得た資金を右両社が半分ずつ運用するという半使いの約束等の下に、三輝の販売員らを動員し、公称の募集予定会員数(適正会員数)を大幅に超えて会員権を乱売し、実質的には無価値に近い会員権と引き換えに多額の金員を騙取したという大規模な詐欺事犯である。起訴分だけでも、前記のとおり、被害者は三〇〇名余で、被害金額も七億四千万円余に達しているが、被告人らは、昭和六三年一一月から平成三年七月にかけて、三輝の販売員のほか傘下の販売代理店を通じて、五万人を超える顧客に対し会員権を販売し、これにより一一九七億円余の金員(この人数、金額は起訴分を含むものである)を得ているのである。

このように、本件の起訴分は、一連の茨城カントリー会員権乱売事件のごく一部を取り出したものであるところ、被告人らはあくまでもこの起訴分についての刑事責任を問われるのであるが、ゴルフ会員権は適正会員数を大幅に超えて乱売されればされるほど実質的に無価値に近づくものであり、また各被告人の利得は起訴分だけでは算定できないことなどから、起訴外の販売の事実も、起訴分の犯行の罪質、態様、動機、結果、被告人らの役割、利得等の情状を推知するための資料としては考慮せざるを得ないところである。

二  本件犯行の態様についてみると、会員募集に先立って、丸西、古屋が水野と度重なる協議を行い、茨城カントリーの会員権を短期間のうちに乱売するための綿密な計画を立てており、しかもその計画たるや一年間で合計二万四五〇〇本もの会員権を販売するという常軌を逸したものであり、販売担当の三輝側において、右会員権の大量販売のために社内の組織体制を拡充する一方、販売代理店を多数抱え込んで三輝の支社・支店を名乗らせるとともに、アメリカの有名プロゴルファーや大手建設会社の名前を前面に出した虚偽ないし誇張にわたる会員募集の宣伝広告をスポーツ新聞等に繰り返し掲載し、販売員に対しては、班長会議等の席を通じて虚偽のセールストークを周知徹底させた上、厳しいノルマを課すとともに、販売実績に応じて高額の歩合給を支給することとし、現地見学に訪れたり、電話で問い合わせをしてきた顧客に対し、販売員を差し向けて、あたかも限定した会員の募集なので施設利用がいつでも可能な上、将来の資産価値も十分見込めるかのように言葉巧みに申し向けてその購買意欲をかきたてるとともに、購入を迷っている顧客には、「締切トーク」、「キャンセルトーク」等と称されるセールストークをも駆使するなどして購入に踏み切らせるといった、誠に手の込んだ巧妙な手口で本件会員権を乱売し、その結果、前記のとおり、多数の被害者から多額の金員を騙取したものであって、極めて組織的かつ計画的であるとともに、極めて悪質かつ巧妙であるといわなければならない。

三  弁護人の主張の中には、一般のゴルフ場は、実際には大かれ少なかれ公表会員数を超過して会員を募集しており、そのためゴルフ会員権販売業界においては、会員権を販売するに当たり、現実の実態とは異なる勧誘文句が用いられることも黙認されてきた面があり、この点を被告人らのために斟酌すべきであるというものがある。確かに、三輝側の被告人らは、弁護人の右主張に沿う供述をしている上、本件が計画あるいは実行された当時まで、ゴルフ場の会員募集の実態については不透明な部分がかなりあり、この点についての行政的規制もほとんどなく、このような状況が、本件のような大規模で悪質な詐欺事件を誘発した面があることは否定できず、それゆえ本件が大きな契機の一つとなって制定された「ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律」(平成四年法律第五三号)の適正な運用が期待されるところであるが、それにしても本件は、半使いの約束等のもとに、多額の資金を集めるべく、二〇〇万円前後の会員権を一年間で約五〇〇億円売り上げるという常軌を逸した販売計画を立て、前にみたような態様で会員権を大量に販売したという一連の茨城カントリー会員権乱売事件の一環をなす計画的、組織的犯行であり、このような会員権乱売の動機、規模、態様に照らすと、被告人らがただ単に業界の悪しき慣習に流されて本件犯行に及んだとみるのは相当でない。

また、古屋の弁護人は、本件詐欺が行われたのはいわゆるバブル経済の最盛期であるから、被害者の多くは、プレーすることを度外視した投機目的で会員権を購入したものであり、また、本件会員権の販売価格からすれば、茨城カントリーが多数の会員を募集する大衆コースであることは明らかであるから、仮に、わずかな会員しか募集しないと信じて本件会員権を購入したのであれば、被害者にも落ち度があると主張する。しかしながら、関係各証拠によれば、本件被害者(起訴分)の多くは、第一次的には茨城カントリーで実際にプレーすることを目的に会員権を購入しており、投機目的で購入した被害者も、財産価値の裏付けとなる定期的なプレーが可能であることを当然の前提としていると認められ、したがって、公表会員数を大幅に超過して会員を募集し、ゴルフ場がオープンしてもプレーが事実上不可能であるということは予想だにしておらず、そのような実態を知っていれば本件会員権を購入しなかったであろうことは明らかである。また、青柳らは販売員らに対し、会員権に関する知識の乏しい者を狙って勧誘の対象にするように指導している上(「世の中は目明き千人、めくら千人。めくらを探して売ってこい」などという言葉で発破をかけている)、前にみた勧誘行為の悪質性に照らすと、被害者が販売員のいうことをそのまま信じて本件会員権を購入したとしても、取り立てて被害者に落ち度があるというのは相当でない。

なお、茨城カントリーの会員権は、前記のとおり、昭和六三年一一月一〇日から販売が開始され、最終的には平成三年七月ころまで乱売されたものであるが、本件詐欺の公訴事実は、そのうちの平成元年一〇月ころから一一月下旬ころまでの販売期間にかかるものの一部(三輝直販分のみ)であるところ、弁護人の主張の中には何故にこの部分のみが起訴されたのかを問題とするものもある。しかし、これは、それまでに二万人をはるかに超える顧客に会員権が販売され、会員権を乱売して顧客から金員を騙取しようという意図が客観的にも明らかになり、しかも、会員権の売上げが最も著しい伸びを示した期間における販売のうちの直販分を、検察官が健全な訴追裁量により、訴訟経済をも考慮し、かつ謙抑的に起訴したものと解される。そうすると、右のような起訴自体に何ら批判されるような点はないというべきである。

四  会員権の乱売によって集められた本件騙取金を含む多額の金員のうち、三輝からケン・インター側に送金された分は、海外事業投資や国内不動産投資等に、三輝側に残った分も、新規事業投資等に回されたほか、丸西らの個人的用途に費消されるなど、その大半が茨城カントリーの開発とは全く関係のないところに費消されている。茨城カントリーは最終的にはオープンできなかったのであるが、これも、被告人らによる右のような会員権販売代金の使途や三輝等の放漫経営をみるとある意味で必然的結果であったといえなくもない(もっとも、被告人らに会員権乱売当時からゴルフ場をオープンさせる意思が乏しかったとまでいうわけではない)。また、本件詐欺事件が表面化してから相当の時日が経過しているにもかかわらず、現在までのところ被害者らに対し何ら被害弁償もなされておらず、被害者らの中には深刻な打撃を受けている者が少なくなく、総じて被害感情には厳しいものがあると窺われる。

そして、本件は一つの社会問題にまで発展しており、世間に与えた衝撃も軽視できず、この種の悪徳商法による大規模詐欺事犯については、近時一般予防の必要性も痛感されるところである。

五  以上によると、本件詐欺についての被告人らの刑事責任は重大であるといわなければならないが、他方、本件詐欺における水野の存在、影響力は大きく、三輝側の中心人物である丸西でさえ、その言動に追従した面があることは否定できないこと、被告人らは、本件が大きく報道されたことにより既にかなりの社会的制裁を受けている上、各自長短の差はあるものの、相当期間勾留されて本件を反省していることなどは、被告人らのために斟酌すべき事情である。

第四各被告人毎の情状

以上にみたような諸事情を踏まえ、各被告人について個別の情状を検討していくこととする(なお、丸西については判示第二の罪、古屋については判示第三の各罪の情状も併せて検討する)。

1  丸西輝男について

(一) 丸西の判示第二の法人税法違反の犯行は、三輝が本件詐欺を含む茨城カントリーの会員権乱売によって得た極めて多額の利得を不法に確保しようとしたものであり、単年度ながら、ほ脱所得額は九億六千万円余、ほ脱税額は三億八千万円余の高額に達しており、ほ脱率も五八・七パーセントであり、低いとはいえない。丸西は、三輝の代表取締役の地位を悪用して、前後の事業年度分を含め合計約八億円もの金員を、自己に対する仮払金や貸付金の名目で引き出し、専ら個人的用途に費消していたが、この仮払金等の経理処理のほか、前記リゾート開発等の事業のための留保資金を確保することを目的として脱税を企図し、その旨を税理士資格を有する大山に指示し、大山をして、架空の領収証等を集めさせ、多額の架空支払手数料等を計上するという不正経理をさせて、三輝の所得を圧縮し、本件脱税に及んだものであって、動機に酌量の余地はなく、態様も計画的かつ巧妙である。右犯行についての丸西の刑事責任も重いというほかない。

(二) 本件詐欺がゴルフ会員権販売による詐欺事犯であることからすると、乱売を直接担当した三輝なしには成り立たない事案であり、丸西は、三輝代表取締役として本件詐欺に計画段階から深く関与し、会社ぐるみの右犯行を積極的に推進した三輝側の中心人物であって、かねてから、自己が経営する三輝をゴルフ場やリゾート施設を開発経営する会社に発展拡張させたいと考えていて、その資金調達のために、自らの経営判断のもと敢えて本件詐欺の犯行を計画、遂行したものである。そして、丸西は、右(一)のような法人税法違反の犯行にも及んでおり、会員権販売代金から遊興費等に費消した分もかなりの額に上ぼり、個人的にも一〇億円余に達する極めて多額の利益を得ているのであって(利得の関係では起訴外の分も含めて、被告人間のバランスを検討している。以下同様)、公私混同が甚だしく、会社経営者として全く無責任な行動に出ているといわざるをえない。このような事情を考慮すると、丸西の刑事責任は被告人七名の中では最も重いというべきである。

他方、本件詐欺の犯行はその規模及び組織性の点からみて、三輝側の役割一つをとってみても、社長の丸西一人では到底これを遂行しえなかったものであり、加えて、水野と知り合った経験や同人の押しの強さなどから、丸西においても水野の言動に追従した面がないではないこと、本件各犯行による身柄拘束が一年半以上に及び、その間反省し捜査にも積極的に協力し、公判廷でも反省の態度を示していること、これまで昭和四四年の業務上過失傷害による罰金前科一犯があるのみであること、病弱の妻が帰りを待っていることなどの事情は、丸西に有利に斟酌することができる。

2  古屋親彦について

(一) 古屋の判示第三の商法違反及び所得税法違反の犯行は、茨城カントリーの会員募集の広告担当業務を遂行中、三輝の副社長等の地位を悪用して、いわゆるバック・リベートを取得するため、発注先の広告会社から三輝に広告代金を上乗せ請求させて、三輝に二億円余の財産上の損害を与え、このようにして得た二か年度にわたる合計一億五六〇〇万円余のリベート収入を、仮名預金口座に入金するなどして秘匿し、虚偽の税務申告をし、二か年度合計で七八〇〇万円余に上ぼる所得税を免れたというものである。古屋は自己の遊興費や株購入資金を得るために本件商法違反等の犯行に及んだものであり、動機は自己中心的で酌量の余地はなく、各犯行の態様も計画的で悪質であり、商法違反による被害は多額であり、所得税法違反のほ脱税額も少額とはいえず、ほ脱率は通算で九三パーセントの高率に達している。これらの犯行についての古屋の刑事責任も重いというほかない。

(二) 古屋は、丸西がケン・インターの水野との間で本件会員権乱売の相談をした際、毎回丸西に同行して話の一部始終に参画し、その後も丸西が水野と交渉する際の介添役として奔走し、役員会議に常時出席して水野の意向を他の役員へ伝達し、三輝側の具体的販売計画の立案に際しては中心的な役割を果たしている上、自ら本件会員権の販売状況を決裁文書等を通じて日々把握し、それに基づいて、丸西に助言したり、他の役員に指示したり、さらには販売員に販売方法の直接指導を行うなどしているのであって、三輝の副社長として本件詐欺に計画段階から深く関与し、丸西の片腕的存在として積極的に行動したものである。そして、古屋は、右(一)のような商法違反、所得税法違反の犯行にも及び、本件各犯行により個人的にも二億八千万円余という多額の利益を得ている。その他、昭和五〇年に詐欺により懲役刑(執行猶予付)に処せられた前科があることなどを考慮すると、古屋の刑事責任は被告人丸西に次いで重いというべきである。

他方、本件詐欺事件については、計画の決定をしたのが、ケン・インターの代表者水野と三輝の代表者丸西であったのに対し、古屋は、これら両名とは自ずと差異のある立場にあったこと(この点は、乱売による個人的利得額の多寡の差にも反映されている。なお、古屋の弁護人は、三輝は丸西のワンマン会社であり、古屋は丸西の指示に従って行動したにすぎず、古屋の刑事責任は丸西のそれとは質的に異なる旨主張するが、前にみたとおり、古屋は、丸西の片腕的存在として、古屋自身の判断によって積極的に行動しているのであるから、弁護人が主張するほど、古屋が丸西に従属した立場にあったとは認められない)、本件各犯行により一年半以上にわたって身柄を拘束され、その間反省し捜査にも協力し、公判廷でも反省の態度を示していること、内妻が社会復帰を待ち望んでいることなどの事情は、古屋に有利に斟酌することができる。

3  青柳正明及び蓮見四郎について

青柳は、三輝の専務取締役営業本部長、すなわち、直販部門の最高責任者として半澤以下の販売部門の従業員を管理監督し、蓮見は、同社常務取締役業務本部長として、三輝の支社、支店を称させた販売代理店を統括管理し、いずれも本件詐欺を含む一連の会員権乱売を直接指揮したものである。その意味で、右両名なしには、大規模かつ組織的犯行である本件詐欺の実現はあり得なかったものであり、同人らの果たした役割は大きい。すなわち、青柳は、本件起訴にかかる会員権販売を直接指揮した者として、本件詐欺において重要な役割を分担していることは明白である。また、蓮見は、本件起訴にかかる会員権販売を直接指揮してはいないものの、三輝直販部門の販売員は、蓮見が統括する販売代理店の販売員と営業成績を競って会員権の販売に当たっており、本件詐欺は、その内実が適正会員数を大幅に超えて会員権を乱売することにより、会員権がほとんど無価値なものになるという点にあり、したがって、これに前後した時期の会員権の販売あるいは三輝傘下の販売代理店による会員権の販売と相互に深く関連しているのであるから、蓮見の三輝内における役割は青柳とほぼ同価値であり、さらには本件詐欺を含む一連の会員権乱売において三輝業務部が統括する販売代理店が販売した会員権の合計本数及び売上金の合計額が本件会員権の売上総金額内で占める割合の高さ(約八割)に照らしても、蓮見は青柳に勝るとも劣らない重要な役割を果たしているということができる。そして、右両名ともに本件詐欺及びその前後の期間において、役員報酬として多額の利益(青柳は八千万円余、蓮見は九千万円余)を得ていることも併せ考慮すると、同人らの刑事責任も重大であるといわざるを得ない。

他方、右両名は、古屋よりも本件詐欺の計画段階における関与の度合いは少なく、むしろその実行段階における現場の責任者として本件詐欺に関与したもので、その役割の重要性には丸西、古屋と比べて自ずと差があること、両名とも本件により一年三か月余にわたって身柄を拘束され、その間反省し捜査にも協力し、公判廷でも反省の態度を示していること、青柳には昭和六二年の道路交通法違反による罰金前科一犯があるだけで、蓮見には前科がないこと、青柳は本件を契機として妻と協議離婚し、これまでの生活を清算するに至っていること、蓮見にはその帰りを待っている妻と二人の子供がいることなどの事情は、右両名に有利に斟酌することができる。

4  島田清志、大山正芳及び半澤隆について

島田は、ケン・インターの専務取締役として、同社の実権を握っていた水野を経理面から積極的に補佐し、三輝から半使いの約束に基づいて送金されてくる本件騙取金を含む会員権販売代金の入金管理、その状況の水野への報告、ケン・インターが水野の構想のもと海外に事業展開するに際しての右金員からの海外送金等の事務を担当したものであり、ケン・インターで水野に次ぐ中心人物として重要な役割を果たしたものである。

大山は、前記第二で指摘した事実からも明らかなように、税理士兼三輝の経理担当取締役として、構造的、組織的犯行である本件詐欺を三輝側において経理面から支えたものであり、本件詐欺において果たした役割は、島田と同程度に重要である。

半澤は、三輝直販部門の営業部長として青柳を補佐し、部下である多数の販売員を直接指揮監督して本件詐欺を含む会員権乱売を現場で推進するという重要な役割を果たしたものである。弁護人は、半澤は上からの決定事項を単に機械的に遂行したにすぎない旨主張するが、関係各証拠によると、半澤も、限られた範囲内ではあるが、販売員への具体的指示に当たって独自に判断し、かつ行動したものと認めることができる。

加えて、本件詐欺及びその前後の期間において、島田は一千万円の臨時報酬を得たほか、本妻と内妻との間の二重生活状態につき、水野から多大の経済的援助を受けており、大山は役員報酬として五千万円余を得ており、半澤は専ら給与として約三千万円を得ていることなどに照らすと、右三名の刑事責任にも軽視を許されないものがあるといわなければならない。

他方、島田、大山ともに、本件詐欺を含む会員権乱売の計画や、実行の決定自体には実質的にはほとんど関与していないといってよく、半澤に至っては、右決定のなされた役員会議やケン・インター側との協議の場にも出席しておらず、班長会議あるいは青柳からの話を通じて後発的に乱売計画に加担したものであり、また、乱売計画の一部始終を知らされていたわけでもない。乱売計画の実行段階においても、島田、大山ともに販売関係には直接関与しておらず、前記のように主として経理面から重要な役割を果たしているものの、その担当業務の範囲内で本件詐欺に関与したにとどまり、水野あるいは丸西、古屋のように会社全体の経営に実権を有し、業務全般について独自の判断をしたような形跡は窺われない。半澤も、青柳を補佐する営業部長にとどまり、被告人らの中ではただ一人、役員の地位になかったものである。以上によると、島田、大山及び半澤の本件詐欺における立場は水野やその余の被告人らと比べると従属的なものであったということができる。その他、本件により、島田と大山は一年三か月余、半澤は六か月余にわたってそれぞれ身柄を拘束され、三名ともその間反省し捜査にも協力し、公判廷でも反省の態度を示していること、本件につき島田は、平成元年七月以降、このまま会員権の乱売を続けた場合には大変な事態になると事の重大性を自覚し、実を結ばなかったものの、自ら水野に対して会員権の乱売中止を進言し、その後も、会社の顧問税理士や顧問弁護士に相談したり、取引先銀行の幹部にその旨の水野に対する忠告を依頼するなど会員権乱売中止に向けた努力をしていること、島田には昭和四二年の傷害による罰金前科一犯があるだけであり、大山には前科がないこと、半澤には昭和三〇年の窃盗、詐欺未遂による懲役前科二犯(いずれも執行猶予付)があるが、その後には前科がないこと、右三名にはそれぞれその更生に協力することを誓う家族や知人がいることなどの右三名のために酌むべき事情も存することころである。

第五結論

以上のほか、被告人らについての有利、不利一切の情状を総合勘案した結果、丸西、古屋及び青柳に対しては、主文の刑はやむを得ないところであり、蓮見については、本件起訴が三輝直販部分に限られていることを考慮しても、その刑事責任は青柳とほぼ同等というほかないので、主文の実刑に処することとし、島田、大山及び半澤に対しては、今回に限り刑の執行を猶予し、社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告人島田清志につき懲役四年、被告人丸西輝男につき懲役一〇年及び罰金一億二〇〇〇万円、被告人古屋親彦につき懲役八年及び罰金二五〇〇万円、被告人青柳正明につき懲役五年、被告人蓮見四郎及び被告人大山正芳につき各懲役四年、被告人半澤隆につき懲役三年)

(裁判長裁判官 安廣文夫 裁判官 中里智美 裁判官 福島政幸)

(編者注 別紙一、別紙二の「犯罪事実一覧表」の登載省略)

別紙3 修正損益計算書

<省略>

<省略>

別紙4 ほ脱税額計算書

<省略>

別紙5

犯罪事実一覧表

<省略>

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別紙6 所得金額総括表

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙7 所得金額総括表

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙8 ほ脱税額計算書

古屋親彦

(1)平成元年分

<省略>

ほ脱税額計算書

古屋親彦

(2)平成2年分

<省略>

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